「アメリカの制裁外交(著:杉田弘毅)を読んだって話。
共同通信特別編集委員の著者によるアメリカの制裁外交を扱った新書。
外交交渉におけるカードとして近年注目されることの多い金融制裁。
各国が等しく持つその外交カードだが、決して対称的ではない。
特にアメリカは極めて強い。
経済制裁とその歴史。
そもそも経済制裁とは何か。「外交、安全保上場の目的を実現するために他国に科す経済的な強硬手段」と定義出来る。ここで軍事力を使用しないためハト派からも許容され、全方位的に好まれる制裁となる。
経済制裁には山体系がある。
+一カ国で行う単独制裁
+有志国連合の制裁
+国連安全保障条理事会決議による制裁
安保理理事国15カ国の利害関係が絡むため、内容も薄く履行にも時間を要する。
制裁の目的は大きく5つある。
+国際的な紛争や対立が起きた際に敵国の経済力を防ぐ
+核兵器の開発・拡散の阻止
+人道目的(南アフリカに対するアパルトヘイト政策への制裁(1985年)など)
+テロ対策(テロ支援国家に対する経済制裁)
+国際法違反となる行為への懲罰
最初の経済制裁は古代ギリシャ時代のペロポネソス戦争。アテネ(既存大国)とスパルタ(新興国)の戦争で、アテネは連合軍への参加を断る中小都市国家群を囲み、貿易制裁を発動した。ボストン茶会事件も貿易制裁であり、経済制裁の一つである。20世紀以降は国外適用がキーワードとなる。
米国政府は愛国法を元に、ブラックリスト入りした海外企業と取引を行う国内企業を取り締まる。銀行も例外ではない。資金洗浄を行なっている疑いのある海外金融機関はドル取引を行う際に、コルレス口座を使用する。コルレス口座とは銀行間の送金決済のための口座だ。日本企業が米国取引先に送金する際、まず日本の銀行に入金をし、米国銀行に肩代わりとして取引先に送金してもらう。その際に銀行間で送金を行う口座だ。このコルレス口座も愛国法により、閉鎖することが出来る。つまり、外国金融機関も国際的なドル送金・決済網から締め出される。
基軸通貨であるドルを発行する国家による経済制裁はあまりにも大きい。
この制裁を犯す企業に対して課される制裁金は巨額だ。2014年のBNPパリバがスーダン・キューバ・イランに対してドル送金を行なったことに対しての制裁金は89億7360万ドル。この中にはBNPパリバが送金に使用した支店のあるニューヨーク州金融サービス局(DFS)に対して22億4340万ドル、ニューヨーク群検事局に対して22億ドル、連邦準備制度に対しての5億8000万ドルが含まれる。
さて、DFSはクオモ・ニューヨーク州知事の肝煎りの機関だ。2011年創設後、ニューヨーク州内で活動する金融機関に対して免許を発行する権限を持っている。それゆえ金融の街において絶対的な権力を持つ。