Daiary 25.09.08ブレイクショットの軌跡(著:逢坂冬馬)を読んだって話。

小説家・逢坂冬馬による小説。一台のSUV・ブレイクショットを巡る人々を描いている。投資ファンドのパートナーを務める富裕層、貧困ながらも慎ましく暮らす親子、ブラックな不動産会社に勤め苦しむ会社員、アフリカの少年兵、期間工…このブレイクショットに関わることになる彼らはそれぞれ事情は違えど不幸を抱え、幸せを望んでいる。読んでいて、苦しくなる。なんせ570pにもわたる作中では世界のどこかに実際にいるのではないか思えるような、世を恨みたくなるような境遇で苦しんでいる人々が描かれている。
てっきり逢坂氏は歴史ものばかり描くと思っていた。だが彼の強みは時代背景ではない。時代を問わず、社会に苦しむ人を描くことを得意としているのかもしれない。”同志少女よ敵を撃て”では激戦下での女性スナイパーの内面と歴戦の戦士に変貌していく様を描いた。”歌われなかった海賊へ”では反ユダヤ思想に突き進むナチス下での少年少女たちの葛藤を書き抜いた。
過去2作と異なり私と同時代の登場人物を描かれており、どこかにいるかもしれない登場人物たちに強い同情の念を抱いてしまう。