ゲーテはすべてを言った(著:鈴木結生)を読んだって話。

気鋭の若手作家・鈴木結生による2025年冬の芥川賞受賞作品。
修猷館高校卒、西南学院大学卒で現在は西南学院大学大学院で学ばれる氏は二十三歳。西新で学び育った著者に興味を持って手に取ったがインテリジェンスに圧巻とした。
哲学者・ゲーテはあらゆる領域に見識を示したことから、博把統一は若い頃、「ゲーテはすべてを言った」という言葉遊びをしていた。何を言ったって、この言葉を言えば納得させるマジックワードである。
時日は流れ、ゲーテ研究の第一人者となった博把統一がふと手にしたティーパックに印刷された「Love does not confuse everything, but mixes. Goethe」という格言が心から離れなくなる。この言葉の出典を探すことからこの物語は始まる。最後のたたみかけるような顛末は引き込まれるとまるで共犯者のようになれる。
圧巻なのはこの世界観を描き切った著者である。アカデミックを舞台にしているが、決して人物描写だけに逃げることなく真っ向からゲーテに立ち向かっている。筆者よりも年上の登場人物ばかり。ただただ尊敬するばかりだ。